「Partner」(パートナー)
2018年3月16日 金曜日
インターネット通販大手の日本法人に独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会から立ち入り検査が入った。
顛末を簡単にまとめれば仕入れた商品を販売するにあたり値引きを余儀なくされた際にその額の一部を仕入れ業者に補填させた疑いである。その部分だけを見れば一概に法令違反というわけでもないが、問題は仕入れ業者に無断で値引きをし、補填を要求する際に取引停止を示唆した点にある。この「示唆」というのが非常にやっかいな問題で受け取り方次第でどうにでも解釈できる。
このニュースを見てふと自分が仕事をしているブライダル業界を振り返ってみた。結論から言えばこの企業を批判できる立場にはない。
我々の業界も他業界と同様に自分たちだけでは結婚式のプロデュースは成り立たない。数多くの下請け業者によって新郎新婦のお手伝いができている。この下請け業者のことを数年前から「パートナー」と呼ぶ風潮にある。中には「パートナー様」という意味不明な日本語を使う会場も多い。
「Partner」(相棒・共同で仕事をする相手・配偶者またはそれに準ずる相手」・・・。なるほど。ある意味間違ってはいない。しかし妙な「違和感」を感じるのは弊社だけであろうか。違和感を感じる理由を自分なりに検証してみた。この言葉の意味としてはその通りなのであるが、感覚的に「対等な立場関係」を前提とする。
果たして結婚式販売業者とその下請け業者は対等か。どの観点からみても発注する側とされる側では対等なわけがない。
弊社LLBは、自社で結婚式場の運営と共に、ウエディング装花などを会場側から請け負う花の業者という両面の立場をもつ。その立場でよく聞かされる言葉が「協賛」「協力」である。
結婚式場と下請けの契約を結ぶ際には本来の価格から手数料と称するバックマージンを要求される。これは花に限らず衣装や美容、写真、引出物などあらゆる業者に適用される。またその歩率も数パーセントから50%くらいにまで及ぶ。ちなみに花の場合は50%~30%くらいを会場側にマージンとして支払う。これらが欧米に比べて日本の結婚式を異常に高くしている遠因でもあるのだが、その問題は別の機会に提起するとして会場側も営業経費を多分にかけて集客しているのだからシステムとしては理解できる。
ただ、ブライダルフェアやクレームのあった場合はほぼ100%業者負担である。業者の立場から言えば仮にクレームで返金を余儀なくされた場合マージンの歩率が50%ならば責任も50%ずつなのが本来である。
ただ・・・業者としては取引をいつ停止されても何も言えない立場なので要求を飲まざるをえない。その関係がすでに先述の「示唆」になっている。少なくとも業者側は「対等なパートナー」などとは決して思わない。下請け業者で結構なので都合の良い時だけ協賛を求めるのはやめてほしいと常々思っている。
たいていの場合、前線で働く20代のプランナーが当たり前のように要求してくる。その親御様もまさか大切に育てた自分の娘が他人の弱みに付け込んで金品を要求して給料をもらっているとは夢にも思っていないだろう。同じ親としてそれを知ったときの悲しみが目に浮かぶと同時にそれを業務として指示している上司の神経を疑う。
弊社も数多くの取引先の尽力で仕事をさせていただいているが基本的に自社の収益のために他社に無償で協賛を要求することは一切ない。個人的な意見になるが払うものは払う方が、逆に品質や考え方に対して対等にモノを言える。厳しい言い方をすれば関係をきちんとしていれば取引先を変更する際にも自由競争において大きな問題は生じない。各社の営業努力次第である。
そろそろ3月も後半に入り、春を迎えようとしている。昨年の新卒社員も大きな成長を遂げささやかな感謝の気持ちを込めて微々たる額ではあるが昇給の目途もたった。
経営者として、社員を預かる立場として、目先の利益を確保するために彼らの親や家族が悲しむようなことは決してさせないように心に思う春節である。